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臨床発達心理実践研究2014 第9巻 1号

臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 4-8

発達支援におけるIT活用の可能性と課題

中邑 賢龍
東京大学先端科学技術研究センター

発達障害について,それを診断し治療・教育するアプローチが主流であるが,彼らの認知の凸凹をならす治療教育がもらたらすデメリット を再確認する必要がある。学習や生活上困難さをもたらす機能の補償はスマホやタブレットPC の普及に より容易になりつつある。また,障害者差別解消法の成立は合理的配慮の提供を義務づけ,こういったIT ツールの利用を後押ししている。子どもに与えられた時間は有限であり,凸凹を均すのではなく,凸凹をさらに際立たせるような支援が必要である。多様な学びが可能な学校で育つ突き抜けた子どもたちが,社会にイノベーションを生み出していくに違いない。


【キー・ワード】IT,発達障害,特別支援教育,障害診断


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 9-15

特別支援学校でのIT活用

青木 高光
長野県稲荷山養護学校

特別支援学校では,教材製作や児童生徒への情報提示の場面を中心に,IT活用は必須のものになりつつある。それをより効果的かつ効率的に行うために,分かりやすい視覚支援素材やタブレット端末の活用に注目が集まっている。ドロップレット・プロジェクト(Droplet Project:Design and Research On the Picture Libraries for Education and Training Project)では,そういった特別支援教育の現場のニーズに応えるべく,障害のある児童生徒にとって分かりやすく,支援者側には活用が容易なシンボルライブラリと,それを用いたコミュニケーション支援アプリケーションの開発と配布を行った。このような環境の整備により,より豊かなコミュニケーション環境と学習の充実の可能性があることが示唆された。


【キー・ワード】視覚シンボル,タブレット端末,VOCA


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 16-20

人工知能と心の理論
――心を持つロボットへの試み

伊藤 昭
岐阜大学工学部

寺田 和憲
岐阜大学工学部

人とロボットの間で「心を読む」ことに基づくコミュニケーションを目指した研究を行っている。そのためには,心の理論,もしくは「心を読む」ということの論理を,計算機に実装可能な形で明らかにしなければならない。我々は心を読むコミュニケーションを,自律性の確保と協調的社会の維持という,二つの目的を同時に達成するために人が編み出した手法であると考える。したがって,心を読むコミュニケーションを実現するには,それが必要とされる状況を作るとともに,「ロボットにも心がある」と人に納得させる必要がある。後者の方法として,我々はロボットによる感情表現・感情理解を重視している。


【キー・ワード】心の理論,心を読む,非零和ゲーム,意図スタンス,ロボット


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 21-24

肢体不自由教育におけるICT・AT活用の普及状況とその課題

金森 克浩
国立特別支援教育総合研究所

特別支援学校(肢体不自由)においては運動機能の障害から表出に課題があり,早期からICT・ATを活用した表出の支援が行われてきた。しかし,それに相反して十分に活用されていないという声も教員の言葉から聞かれている。そこで,これまでのICT・AT 活用の実践を概観し,課題について検討した。肢体不自由児者に対してはコンピュータ登場以前から意思伝達としての手段としてさまざまな機器が活用されており,コンピュータの登場とともに学習面や情報教育などさまざまな活用されてきた。しかし,詳しい教員が中心となって利用される傾向があり,校内での普及のためには機器の整備,人材育成,学校のシステムなどを整えることで活用が進むと考える。


【キー・ワード】ICT,AT,特別支援学校,肢体不自由,コンピュータ


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 25-28

ITを活用した視覚障害児者の支援

小林 巌
東京学芸大学教育実践研究支援センター

本稿では,視覚障害児者の支援に関する代表的なITの活用について,①触覚を活用した支援(触覚支援),②聴覚を活用した支援(聴覚支援),③視覚を活用するための支援(視覚支援)の3つの観点から説明した。具体的には,主に①では点字ディスプレイ,ノートテーカー,3Dプリンタ,②ではスクリーンリーダー,DAISY,コードリーダー,③ではコンピュータ等のアクセシビリティ機能による画面調整,タブレット端末,視覚経験を促すための情報システムについて取り上げた。活用の際にはそれぞれ十分な配慮が必要であり,そのうえで,利用者により多くのメリットをもたらすために様々な実践を重ねていくことが大切である。


【キー・ワード】視覚障害,触覚支援,聴覚支援,視覚支援,IT


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 29-34

発達障害のある児童へのスマートフォンを利用した買い物指導

坂井 聡
香川大学教育学部

本実践では,自閉症と知的障害のある児童1 名に対して,携帯型情報端末機器であるスマートフォンを用いて,コンビニエンスストアでの買い物の指導を行った。これまでは,紙で作られた手順表を用いた買い物指導を受けていたが,効果は上がっていなかった。しかし,スマートフォン導入後,一連の買い物行動の行動連鎖が進み短期間のうちに買い物行動を形成することができた。また,他店での買い物にも広がった。そこには,スマートフォンと使われたアプリケーションの特性が関係していることが示唆され,携帯型情報端末が発達障害のある子どもの指導に活用できる可能性が示された。


【キー・ワード】スマートフォン,自閉症,知的障害,買い物指導


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 35-41

ITを活用した発達支援の国際的動向
――英国大学における読み書き障害のある日本人留学生への支援事例

平林 ルミ
日本学術振興会特別研究員PD・東京学芸大学

本論文では,筆者が2012年4月~2013年3月の間滞在した英国のS大学において関わった読み書き障害のある大学生の支援事例を報告することで,英国のITを活用した発達支援の現状と課題を明らかにし,それをもとに日本のITを活用した発達支援の課題について論ずる。


【キー・ワード】読み書き障害,入試,テクノロジー利用,国際的動向,合理的配慮


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 42-51

15か月児健康相談からの早期発達支援
――「1歳半健診」時における問診・行動観察との縦断的比較

奥野 みどり
群馬パース大学

亀田 良一
みなかみ町立桃野小学校

毛塚 恵美子
群馬県立女子大学

早期からの支援を目的に,15か月児健康相談および「1歳半健診」(20か月で実施)で,アイコンタクト,共同注意,指差しなど社会性の発達に関する,保健師によるスクリーニング検査を導入し,その効果を支援につなげる視点から検討した。その結果,発達全般に渡って早期からの支援が必要な群,移動動作の獲得により人との関わりが一時的に弱くなっていると考えられる群,人との関わりがやや遅れて発達すると考えられる群と,それぞれに特徴的な発達傾向を持ち,異なる支援が必要な3群の子どもたちが抽出された。本研究で導入した検査は,大人とのやり取り遊びになっており,保護者に子どもとの関わり方を具体的に示すモデルとしても機能した。


【キー・ワード】15か月児健康相談,「1歳半健診」,スクリーニング検査,人との関わり(社会性)の発達,早期支援


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第1号 52-60

学齢期の自閉症スペクトラム障害児に対する仲間関係発達支援プログラムの開発

森脇 愛子
東京学芸大学障がい学生支援室,東京小児療育病院心理科

藤野 博
東京学芸大学教育学部特別支援科学講座

自閉症スペクトラム障害(ASD)の児童において仲間関係の困難さに対する支援ニーズは高く,学齢期早期から実施できる支援プログラムの開発は喫緊の課題である。ASD児の仲間関係の実態や特性に基づくと,特定の仲間との親密な関係形成に適した支援の再構築が必要であると考えられたため,我々は数年来の実践を通してバディ・システムを中心とした仲間関係発達支援プログラムを開発した。これはASD児2人組(バディ)を活動の基本単位とする支援形態において具体的な文脈に応じた生態学的アプローチによる介入を行い,仲間関係の発達プロセスを直接の支援目標とするものである。本稿では支援プログラムの枠組みとリソースについて報告する。


【キー・ワード】自閉症スペクトラム障害,仲間関係,バディ・システム,発達支援,生態学的アプローチ