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臨床発達心理実践研究2013 第8巻

臨床発達心理実践研究2013 第8巻 4-7

「実践研究の方法」総論

長崎 勤
筑波大学,日本臨床発達心理士会幹事長

本巻では,臨床発達心理の実践研究の方法について特集しているが,実践研究の目的について,①実践方法の共有,②実践の相対化・自己評価,③人間探求,発達の新たな理解に向けて,の3つの観点を再度確認した。その上にたって実践研究のための必要条件として,①再現可能性,かつ②反省性の2つの要件をあげた。次に,実践研究の方法の多様性を量的研究から質的研究までの幅広く考え,それぞれの方法の特性や問題点を考慮して,研究の目的や必要に応じ方法を選択してゆくことの必要性を述べた。最後に,研究倫理への配慮の重要性について述べた。


【キー・ワード】実践研究の目的,実践研究の方法の多様性,目的に応じた方法の選択


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 8-16

保育園のクラスを対象とした社会的スキルの発達支援

小林 真
富山大学人間発達科学部

本研究では,幼児の集団を対象に継続的なゲーム遊びを導入し,社会的スキルの発達を支援した。約4ヶ月間(2期)にわたって,週に1回のペースでボールゲームを実施したところ,保育者評定による社会的スキル尺度の得点の上昇が見られた。分散分析と多重比較によれば,社会的スキルの下位尺度のうち主張尺度はゲーム導入後からすぐに上昇し始めた。協調尺度は第2期になってから上昇した。尺度得点の変化は,ゲーム遊び及び話し合いの際の子どもの行動の変化と対応しており,生態学的な妥当性が確認された。


【キー・ワード】幼児,社会的スキル,ゲーム遊び,生態学的アセスメント,分散分析


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 17-20

保育・教育の場におけるチェックリストを用いた実践研究の進め方

本郷 一夫
東北大学

本稿は,保育・教育の場におけるチェックリストを用いた実践研究の進め方について述べるものである。具体的には行動観察チックリスト,「気になる」子どもの行動チェックリストの2つのチェックリストの構成,使用方法,信頼性,分析と結果のまとめについて概説した。臨床発達心理学的実践研究においては,この2つのチェックリストを同時に使用して,その結果の類似性と差異性に着目した分析,「気になる」子どもの行動チェックリストについての複数の保育者のチェック結果のズレの分析などに基づく支援計画の立案,支援とその評価を実施していくことが重要であることを述べた。


【キー・ワード】行動観察チェックリスト,「気になる」子どもの行動チェックリスト,チェック結果のズレ,信頼性


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 21-24

単一事例デザインを用いた方法

大石 幸二
立教大学現代心理学部

単一事例デザインを用いた実践研究は,個人差やその背景が異なるクライアントに肉薄する際の有力な実践・研究の方法である。臨床発達心理士がこの研究法を学ぶことは,他の研究法を採用して実践の理論化や意味づけを図ってきた人たちにも,益となる部分が多いであろう。単一事例デザインを用いた方法でも,研究の構想・計画段階から支援実践の全体を眺め渡す視野と,具体的な手続きの適切性・妥当性・信頼性をモニターするマネジメント力,そして結果を整理し,分析し,検討の土台に載せるための科学的な態度が求められる。そして何より,クライアントの最善の利益や幸福追求の権利に意を用いることを旨として取り組む倫理的態度が必要である。


【キー・ワード】ベースライン,記録,信頼性,効果評価,社会的妥当性


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 25-33

質的分析・量的分析を用いた方法
――多職種連携・協働による仮説検証型事例検討の実践例

大川 一郎
筑波大学

田中 真理
東京成徳大学

本稿では,日本老年行動科学会が取り組む「多職種連携・協働による仮説検証型事例検討」の実践例について紹介する。この事例検討では,多面的な側面からの質的・量的データの収集,対象者の気になる行動の特徴,変容可能なターゲット行動の選定,ターゲット行動が生起する背景に関する仮説生成,その仮説に基づく対応の検討,実施し,対応の前後での対象者の行動に関するデータを比較,という一連の手続きから成っている。今回はレビー小体型認知症高齢者に対するこれらの一連の実践例を取り上げ,それぞれのステップの詳細についてふれ,最後に,これらの実践における多職種連携・協働による行動の理解と対応の検討の重要性について述べた。


【キー・ワード】仮説検証型事例検討,認知症高齢者,ターゲット行動,介入,効果


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 34-38

事例の変化をエピソード記録により時系列で検討する方法

藤崎 春代
昭和女子大学大学院生活機構研究科

本稿では,実践者が自身の実践事例をエピソード記録に基づいて時系列で検討する研究方法について論じた。具体的には,①エピソードとは〈注目に値する〉〈分離された〉出来事である,②エピソードの選択は,出来事の展開時にはアセスメント仮説や支援仮説に対応して,論文執筆時には研究目的に対応して,2段階でなされる,③エピソードを記録する際,注目に値する・分離されたエピソードとしての特徴をもたらす要因を検討するため,いつ・どこ・誰の情報とともに,行動の客観的記述と解釈とをともに記録する,の3 点を検討した。最後に実践研究として一般化可能な研究課題を追求するための留意点も挙げた。


【キー・ワード】事例の変化,エピソード,実践者,一般化可能性


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 39-43

現場研究のためのナラティヴ・アプローチ

やまだ ようこ
立命館大学

ナラティヴとは,「広義の言語によって語る行為と語られたもの」をさす。 ナラティヴ・アプローチは,現場研究に適している。それは,当事者の意味づけ,出来事が起こった文脈,多様でローカルな見方などを重視するからである。負の体験を肯定的に変化させるためにも役立つ。ナラティヴ・アプローチは,従来の心理学の人間観や方法論とは異なり,研究者と研究協力者とのインタラクションを前提にした「質的研究法」の考え方を基にしている。インタビュー法では,問題の明確化,インタビュー相手の選定,問い方の技法,語りプロトコルの作成,リフレクションなどが重要である。


【キー・ワード】ナラティヴ,質的研究,インタビュー,意味,相互作用


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 44-52

幼児の身体の動きへの支援が身体像の描出および行動表出に及ぼす効果

中内 麻美
深谷市立教育研究所

大石 幸二
立教大学現代心理学部

KSDやKFDなどの動きを表す描画に見られる身体像の歪みは,集団適応や行動表出の問題を予測する指標になるとされる。この仮説に基づき,幼児用問題行動尺度を用いて外在化問題行動群(E群),内在化問題行動群(I群),混合問題行動群(M群)の何れかに該当すると判定された4歳児7名を対象に,日々の保育活動の中で身体の動きへの介助や対応を保育者が行った。その結果,I群の幼児にはKSD(動的学校画)に描かれた身体像と幼児用問題行動尺度の評定値に顕著な変化が見られた。これらを踏まえ,身体の動きへの支援が身体像と行動表出に及ぼす効果について考察した。


【キー・ワード】動きを表す描画,身体の動き,身体像,行動表出,自己調整力


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 53-61

吃音のある小学生への支援
――吃音の軽減と吃音への感情の変化について

村瀬 忍
岐阜大学教育学部・岐阜大学大学院医学系研究科

神野 幸雄
岐阜大学教育学部

馬淵 沙奈美
岐阜県立岐阜聾学校

音読への苦手意識を強めてきた小学4年生の女児が,吃音のある自分を強く否定することを防ぐことを目的に吃音支援を実施した。支援の目標は,音読における吃音症状を軽減して,怖がらずに音読ができるようになること,および,吃音について指導者と話し,吃音のある自分を肯定できるようになることであった。対象児は,吃音修正法で吃音の軽減に取り組んだ時期,吃音修正法での話し方を否定的に思う時期,流暢性促進法で吃音の軽減に取り組んだ時期,吃音受容の気持ちが芽生えてきた時期の4つの時期を経て,吃音と吃音への気持ちを変化させていった。支援の結果,難発の吃音はある程度軽減できるものの,吃音の軽減と吃音のある自己の肯定の気持ちとの両立は難しいことが明らかになった。また,吃音の肯定には,同じ吃音の仲間の存在が重要であることも確認できた。


【キー・ワード】吃音,言語訓練,吃音受容,自己肯定感


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 62-72

読み書き障害のある中学生に対する定期試験における配慮
――個別評価に基づき代読措置を求めた事例

平林 ルミ
日本学術振興会特別研究員・東京学芸大学

中邑 賢龍
東京大学先端科学技術研究センター

本研究は,読み書き障害のある中学生(支援開始時は小学生)を対象として詳細な読み書き評価を行い,評価を基に中学校での定期考査での配慮を提案した。その結果,定期考査での代読が認められ中学1年3学期から中学3年まで代読で試験を受けた。中学3年時に本児が高校入試の代読受験を希望したため,代読の効果評価を行い,読み書き困難の評価および代読の効果評価を併せ高校入試における代替措置申請を行った。結果として,県立高校入試および私立高校入試において代読による受験が認められた。臨床発達心理士などの専門家は,今後読み書きに困難のある中学生が試験での配慮を申請するための根拠となる評価を行う必要性が高まることが予測される。


【キー・ワード】読み書き障害,試験,評価,代替措置,代読


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 73-79

家庭参入型の親子とのふれあい体験が大学生の親準備性にもたらす効果

小島 康生
中京大学心理学部

水野 里恵
中京大学心理学部

塚田 みちる
神戸女子短期大学

子育て家庭での親子とのふれあい体験が大学生の親準備性にもたらす効果を検討した。学部学生が乳児のいる家庭をそれぞれ4回訪問し,子どもの世話や遊び等を経験した。分析対象とした22名の学生のレポートには,子どもの成長ぶりや子どもとの関係の深まりへの言及が多数あり,いっぽう子どもをあやせず困惑した,母親の助けになれず不甲斐なかった等の記述も多くみられた。質問紙調査の分析結果からは,「子どもの世話に対する自信や興味」,「将来,親になることへの具体的かつ肯定的イメージ」が上昇することが示され,生活に根ざした体験が子育て生活の正負両面への気づきを促し,それが親準備性の向上につながったのではないかと考察された。


【キー・ワード】親準備性,ふれあい体験,親子,家庭参入型,大学生


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 80-90

大学卒業期に来談したパニック障害の事例
――学生相談における短期認知行動療法の実践

松田 美登子
東京富士大学経営学部

学生相談室におけるパニック障害(Panic Disorder : PD)の事例研究である。PDは突然,激しい不安に襲われ,動悸や呼吸困難,発汗,めまいといった発作症状を繰り返す疾患である。日本の有病率は,3.4%(男性1.7%,女性5.0%)と報告されている。PD を主訴として卒業間際に来談した大学4年生のAさん(男性)に対して,PDの心理教育を行った後に,短期の認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy : CBT )を行った。Aさんはパニック発作に対して,イメージによる暴露療法(エクスポージャー法),呼吸法,心のつぶやき法によるコーピングを行った。その結果,パニック発作を回避でき,症状を改善することができた。卒業後は社会人として通常の勤務ができている。Aさんの認知の変容と学生相談室におけるPD 治療のポイントについて検討した。


【キー・ワード】学生相談,パニック障害,短期認知行動療法,心理教育


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 91-99

積極的行動支援における外部支援者の役割の検討

太田 研
立教大学心理教育相談所

本研究では,学校内において器物破損を行う広汎性発達障害生徒1名を対象に,担任教師,母親,著者から成る支援チームで積極的行動支援を行った。支援計画立案の際は,機能的アセスメントにより器物破損行動が生じている前後状況を整理し,文脈適合性に留意した。支援計画は,器物破損行動のセッティング事象操作,直前の状況の操作,代替行動の指導,直後の状況の操作から成った。支援の結果,器物破損行動の減少,および機能的に等価だと推定された代替行動の増加が担任教師より報告された。さらに,対人交流の拡大にもつながった。チームアプローチによって効果的で実行可能な支援計画を立案するために,外部支援者が果たす役割を検討した。


【キー・ワード】積極的行動支援,機能的アセスメント,器物破損行動,協働


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 100-107

肢体不自由を伴う自閉症スペクトラム児への支援
――カンファレンスの効果について

松田 杏里
熊本県立こども総合療育センター

本研究では,肢体不自由児施設における自閉症スペクトラム障害児に対する支援をどのように行っていくべきかを明らかにするため,様々な職種の職員が関わったことによる対象児の変化を分析した。その結果,対象児に関わる職員が参加する「カンファレンスの効果」として「職員の意識と行動の変容」が生じ,それが対象児の落ち着く環境作りへとつながり,児の行動が改善した。カンファレンスを行うことによって,障害について正しく理解し児の現状を的確に捉え問題行動の要因の検討すること,そしてそれらを職員全員が共通認識することが,施設における自閉症スペクトラム児に対する個別化された支援を可能にする条件であることが明らかになった。


【キー・ワード】肢体不自由児入所施設,自閉症スペクトラム障害(ASD),カンファレンス,個別支援計画


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 108-118

自閉症スペクトラム障害生徒の進路指導におけるTTAPの活用

清水 浩
宇都宮大学教育学部附属特別支援学校

梅永 雄二
宇都宮大学教育学部

本研究では知的障害特別支援学校高等部から一般企業就労に向けたスムーズな移行支援を図るために,自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders : 以下ASD)の特性や長所を取り入れた検査であるTTAP(TEACCH Transition Assessment Profile)を実施することにより,ASDの症状からもたらされる問題点の把握,ASDの強みを生かした支援内容及び支援方法を見つけ,知的障害のあるASD生徒の進路指導におけるTTAP の活用について検討した。TTAP は米国において,知的障害を伴うASDの生徒が学校を卒業後,社会に参加する上で必要な教育サービスを提供するためのITP(Individualized Transition Plan : 個別移行計画)を策定するために使われるアセスメントである。その結果,TTAPのフォーマルアセスメント及びインフォーマルアセスメントを現場実習事前学習及び現場実習にそれぞれ活用することで,ASD生徒の強みを生かせる現場実習先の選定を始め,知的障害特別支援学校高等部で実施している進路指導の全体を通し,移行支援計画における就労に向けたより具体的な指導内容及び方法等を明らかにすることができた。


【キー・ワード】自閉症スペクトラム,TTAP,キャリア教育


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 119-126

自閉症スペクトラムの発達診断をふまえた特別支援教育により
専門学校・大学へと進学した4事例
――高等教育段階の特別支援教育における臨床発達心理士の役割

伊藤 淳一
北海道社会福祉事業団 太陽の園・発達診療相談室

小・中学時期からの自閉症スペクトラムの発達診断に基づく特別支援教育をうけたことで,一般高校から専門学校や大学へと進学しえた4事例の経過をふまえて,高等教育段階における支援教育における臨床発達心理士の役割について考察した。幼児期からの個々の発達の特異性に対する早期療育,さらには特別支援教育をすすめることで,これまで以上に知的発達を促進させることや自己認識を高めることにつながる。その一方で,教育的な経験を通して知識や判断力が高まる反面,発達や行動の特性がより複雑化することも懸念される。成人期の社会生活を見通した発達支援を継続するうえで,臨床発達心理士も積極的に関わる必要がある。


【キー・ワード】自閉症スペクトラム,特別支援教育,高等教育,自己認識,成人期


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 127-137

自閉症スペクトラム障害のある青年期の就労支援
――就労レディネスとしての自己認知,生活リズム,適応手段の向上を目指して

萩原 拓
北海道教育大学旭川校

関 洋子
上川中南部障害者就業・生活支援センターきたのまち

自閉症スペクトラム障害のある人々への就労支援の在り方がさまざまなかたちで模索されているが,従来の「就労スキルおよび社会性スキル向上中心」の支援形態の再検討が,現在青年・成人期を迎えているASDのある人々の現状から必要と思われる。本研究では就労支援プログラムにおいて,「自己認知」,「生活リズム」,「適応手段」の3点に焦点を当てた自立スキルの向上を第一の目的とし,実践結果の検討によるASDのある人々への就労支援の今後の在り方について示唆を得ることを第二の目的とした。本プログラム終了時全8名の参加者中2名の就労という結果となった。実践の経緯および結果の検討から,就労支援プログラムは就職するまでではなく,就労後の職場定着および生活維持を目標とすべきであることが確認され,さらに今後のASD 就労支援の在り方についていくつかの課題点が示唆された。


【キー・ワード】自閉症スペクトラム障害,就労支援,自己認知,生活リズム


臨床発達心理実践研究2013 第8巻 138-144

東日本大震災後の教師支援のための研修会活動
――「ケア宮城」の2年間の実践活動報告

畑山 みさ子
ケア宮城代表・宮城学院女子大学名誉教授

「ケア宮城」は,東日本大震災後に教員支援を主目的に臨床発達心理士を含む3心理士会有志により立ち上げた連携組織であり,宮城県教育委員会との連携事業として研修会活動を行ってきた。2011年度および2012年度の2年間に,宮城県内を中心に88回の研修会を開催した。本稿では「ケア宮城」が行ったそれらの実践活動および関連活動も含めて報告し,今後の被災者支援のあり方について考察する。


【キー・ワード】東日本大震災,ケア宮城,教師支援,心のケア研修会