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臨床発達心理実践研究2010 第5巻

臨床発達心理実践研究2010 第5巻 4-11

成人障害者と高齢者支援をめぐる行政・福祉の現状と課題

大塚 晃
上智大学総合人間科学部

成人障害者と高齢者支援をめぐる行政・福祉については,障害者自立支援法や発達障害者支援法に基づきさまざまな施策が実施されてきている。 これら施策は,障害者の地域生活や就労を進め,障害者が安心して生活することが目指されている。
その際,自立を支援する観点から地域における障害者のライフステージを通した一貫した支援や医療,保健,福祉,教育,雇用など分野横断的施策の連携が重要であると考えられる。
障害者にとってそのニーズに応じた支援が途切れることなく継続的にネットワークが構築されて行われることが望まれるが,そのような支援体制は全国どこでも構築されているとは言い難い。本論文では,成人及び高齢障害者の支援をめぐる行政・福祉の現状を明らかにするとともに,個別支援計画の作成による連携やネットワークの構築など,今後,行政や福祉が取り組むべき課題について明らかにする。


【キー・ワード】成人・高齢障害者,地域生活支援,ライフステージを通した一貫した支援,関係機関の連携,個別支援計画


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 12-18

成人期知的障害者の退行(生活機能低下)の実態
――生涯発達支援における成人期の課題

菅野 敦
東京学芸大学

知的障害者の成人期退行(生活機能低下)に対する支援を目的に実態調査を実施した。
その結果,性別や障害の程度は発症に関係がなく,年齢的には30~50 歳代の発症が75%を超えること,障害種としてダウン症に多く発症していることが明らかとなった。
さらに,退行者の半数は医学的な診断を受けていないが,受けている者のほとんどは精神科疾患であった。
退行は,運動や作業能力といった外面上の変化に顕著であったが,同時に,知的能力や性格特性など内面においても生じていた。
原因は,「心理・適応上の問題」が最も多く,「加齢に伴う老化現象」,「疾病・疾患」の順であった。
原因から症状発現のメカニズムを明らかにしていくことが今後の課題である。


【キー・ワード】知的障害,成人期,生活機能低下,退行,心理・適応上の問題


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 19-26

成人期の知的遅れのない発達障害者(高機能自閉症,アスペルガー障害,LD,ADHD)の現状と課題

三宅 篤子
帝京平成大学

知的遅れのない発達障害者に関する文献研究より,成人期に明らかになる問題と支援の課題を整理した。
その結果,成人期の発達障害者には就労困難,引きこもり,触法等さまざまな困難が生じること,支援に当たっては,発達障害者の認知特性にもとづく状況認識の誤解などからその特性に見合ったコミュニケーション支援,自己認知と結びつけた障害理解,感情コントロール支援が必要であることが明らかになった。
これらの問題を解決または予防するために必要な支援ツール/プログラムを例示した。


【キー・ワード】知的遅れのない発達障害者,就労困難,引きこもり,コミュニケーション支援,自己認知支援,感情コントロール


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 27-35

路上生活者支援における臨床発達心理士の役割
――関わり始めて間もない時期の問題意識を中心に

坂本 佳代子
坂本福祉相談事務所

知的障害者も発達障害者も教育対象年齢時には支援につながっているが,その後はどうなっているのかという疑問を多くの関係者が抱いている。
また,その年代に支援につながっていなかった人は,成人になってからどのような生活をしているのかとの懸念もある。
ここではそうした懸念の中から,路上生活者に視点を置いた。路上生活者の支援としてはNPO 支援団体,ボランティア団体,宗教団体などが先んじているが,ここでは東京都と特別区によって運営・実施されている事業を取り上げた。
この事業では(臨床発達)心理士の資格をベースとした心理相談が位置づけられており,その実践の一端を紹介すると共に,今後の課題を明確化したい。


【キー・ワード】路上生活,心理相談,成人期発達障害,コミュニケーション能力


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 36-42

高齢時代の老年期の発達支援における課題
――サクセスフル・エイジングモデルの実践への応用

日下 菜穂子
同志社女子大学

本論文の目的は,超高齢時代に対応しうる老年期の発達支援に必要な視点は何かを考えることである。
老年期における変化に適応した状態をあらわす一概念としてサクセスフル・エイジングを取り上げた。
発達心理学の立場からの研究動向の概観では,加齢のプロセスを多次元的にとらえることの重要性が確認された。
またサクセスフル・エイジングの概念を応用した,地域におけるうつ予防の実践を報告し,多職種の連携による老年期の支援のあり方についての提言とした。
衰退や喪失の側面が強調される老年期にあって,発達の多面性を理解し個々人の目標到達のための最適化の過程を支えることが,今後の老年期の発達支援において必要であると考えられる。


【キー・ワード】加齢,サクセスフル・エイジング,well-being,うつ予防


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 43-50

高齢者研究の現状と臨床発達心理学の役割

権藤 恭之
大阪大学人間科学研究科

先進各国では,様々な学問領域で高齢期に関する関心が高まっているにもかかわらず我が国の心理学領域において,高齢者を対象とした研究は少ない。
現代の高齢者の特徴は,低い年齢の高齢者(前期・後期高齢者)においては健康状態が向上しているが,高い年齢の高齢者(超高齢者)においては虚弱が進行することである。
サクセスフルエイジングは高齢者にとって最も重要な概念であり,社会学,医学生理学,心理学から理論が提案されている。
しかし,超高齢者や百寿者にはこれらの理論を適応することは難しいため,新しいサクセスフルエイジングの理論が求められる。
超高齢者を対象とした研究結果からは,心理学的枠組みに基づいた理論が最も有望であることが示され,我が国の臨床現場において様々な症例を集約することが理論の構築に貢献すると考えられる。


【キー・ワード】サクセスフルエイジング,離脱理論,活動理論,SOC理論,老年的超越理論


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 51-57

障害高齢者の現状と支援の課題
――家族は介護ストレスにどう対処すべきか

岡林 秀樹
明星大学

障害のある高齢者の家族介護者の精神的健康の維持に対する対処方略の効果が,以下の3つの研究によって検討された。
調査対象者は,東京の郊外に居住する障害のある高齢者の家族介護者全数であった。
1)初回調査の有効回答者834名の回答を分析した結果,「介護におけるペース配分」は直接的に燃えつき症状を軽減する効果が,「気分転換」は介護拘束度を介して燃えつき症状を軽減する効果が示された。
2)「介護におけるペース配分」は介護拘束度の増大に伴う燃えつきの悪化を和らげた。
3)初回調査から1年後の追跡調査の回答者のデータ(546名)を分析した結果,「気分転換」のみが介護者の燃えつき症状を軽減させた。
また,燃えつき症状が高い介護者は,介護役割を積極的に受容できなかった。
これらのことから,介護という慢性ストレス事態に対しては,「介護におけるペース配分」や「気分転換」という「回避型」の対処が介護者の精神的健康の維持に有効であることが明らかになった。
つまり,介護者が,無理なく安心して介護から離れ,自らの生活を楽しめるゆとりをもてることこそが,介護者のみならず,障害のある高齢者にとっても重要なのであり,そのために,公的な社会福祉サービスを量的・質的に拡充させることが,我が国の喫緊の課題であることが指摘された。


【キー・ワード】介護者の精神的健康,介護ストレス,適応的な回避型対処


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 58-65

宮城県における子育て支援の実態調査
――現場のニーズを探る

津田 千鶴
修紅短期大学

足立 智昭
宮城学院女子大学

本調査は,宮城県内の子育て支援の実態と課題,現場からの臨床発達心理士へのニーズを明らかにし,連携の方向性を探ることを目的に実施された。
宮城県内の子育て支援に従事する機関1176カ所を対象に郵送法による質問紙調査が行われた(回収率,49.7%)。
その結果,現場では,気になる子どもの保護者対応に困難を感じており,スタッフや予算,環境など活動の維持に課題を抱えていることが分かった。
臨床発達心理士への支援ニーズは高く,(1)保護者対応への支援,(2)研修への支援,(3)アセスメント・IEP作成による活動の計画・評価に対する支援,(4)活動内容の作成に関する支援,(5)現場の悩みや不安に応える相談システムの構築,などの支援が求められた。


【キー・ワード】子育て支援,子育て支援現場の実態と課題,子育て支援現場からのニーズ,臨床発達心理士の専門性,現場との連携


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 66-74

行動問題を示す重度重複障害児に対する積極的行動支援

神井 享子
愛媛県立今治特別支援学校新居浜分校

藤野 博
東京学芸大学教育学部

肢体不自由・視覚障害・知的障害を併せ有する重度重複障害の一事例に対し,自傷行動の低減を目的として,担任教師が積極的行動支援(PBS)による支援を行い,その効果について検討した。支援に当たっては機能的アセスメントの結果に基づき支援計画を立案し,先行事象及びセッティング事象の操作によって自傷行動の低減を図り,併せて代替スキルの指導を行った。
その結果,自傷行動の頻度・強度は低減し,指導した代替スキルが様々な場面で生じるようになった。
また,これらの結果から,担任教師が学校現場において支援を実施する上での課題や,重度重複障害児において代替スキルを選定・指導するに当たっての留意点についても,併せて検討した。


【キー・ワード】行動問題,重度重複障害児,積極的行動支援,機能的アセスメント


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 75-88

算数学習困難がある小2女児への学習支援の効果

冨永 由紀子
明星大学大学院人文学研究科

本研究は,算数学習に困難が見られた小2女児に対し,算数の個別指導を導入し,保護者への定期的な面談を行った16ヶ月に渡る長期的な事例研究である。
算数学習は,教科学習の中でも4つの学習内容領域(数と計算・量と測定・数量関係・図形)がスパイラルに配置されることや積み上げ型の学習であるため,苦手意識を克服することが難しい教科である。
本研究では,算数学習に困難が認められた児童に対し,認知特性を考慮したアセスメントを行い,実態に合わせた算数の単元網羅的な個別指導を実践し,通常学級との連携を図り,保護者への理解の啓発を行った。その結果,本児の算数学習定着が図られ,授業拒否が減少するに到った過程を報告する。


【キー・ワード】算数学習困難,算数障害,個別指導,保護者面談,親子関係


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 89-95

音声表出が困難なアテトーゼ型脳性麻痺児への特別支援学校におけるコミュニケーション支援

井上 道子
小平市立障害者福祉センター

アテトーゼ型脳性麻痺によって音声表出と身体の随意運動が困難な小学部3年生女児に対し,特別支援学校の自立活動において,AACとして色分け50音表を用いて,視線選択によりことばを構成しコミュニケーションを行う個別指導を1年間行った。
50音表を用いてのコミュニケーションの楽しさを体験し,有効感を持てるように指導内容を組み立て,学校内の支援者間で協同しつつ進めた結果,視線選択による単語の構成がスムーズになり,コミュニケーション場面での自発的な表出が拡大した。
一方,音声言語表出が困難な重度脳性麻痺児は,文字言語における音韻操作や特殊音節の表記法の習得に困難さがあることが示唆された。


【キー・ワード】脳性麻痺,AAC,自立活動,支援者間の協同,音韻意識


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 96-102

視覚障害を伴う重複障害児への模倣的関わりの効果

田中 美成
東京都立村山特別支援学校

伊藤 良子
東京学芸大学教育実践研究支援センター

視覚障害を伴う重複障害児に対して,対象児の音声言語を大人が模倣したり,対象児の行動を擬音語・擬態語により言語化して応答したりする模倣的関わりを継続的に行った。
その結果,ポジティブな感情を引き起こし,情緒・行動の安定が促進され,コミュニケーション行動が増加した。模倣的関わりは,大人が子どもに注意を向けていることを最も明確に伝える方法であり,視覚障害を伴う重複障害児への有効性が示された。
模倣的関わりは,子どもに自他の関係を知る機会,ターンテイキングに沿ったやりとりをする機会,子どもがイニシアチブをとる機会,自分の伝達手段の効果を知る実践的機会を与えたものと考えられる。


【キー・ワード】重複障害児,視覚障害,模倣的関わり,コミュニケーション


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 103-109

高機能自閉症児への対人関係スキル指導におけるICF活用

清水 浩
宇都宮大学教育学部附属特別支援学校

本研究では知的障害特別支援学校において,対人関係での困難を示し,問題行動を示す高機能自閉症児(以下,A児とする)に対して,ICF関連図を作成し,指導方針及び指導方法の妥当性の検証を行った。
その結果,対人関係スキルの獲得と行動問題の低減,自己評価の向上が認められた。
また,ICF関連図を作成する過程で,今のA児の全体像を生活面から把握し,そこからニーズを分析することで支援の方向性が明確になった。
さらに,教師の連携の必要性を指摘した。


【キー・ワード】高機能自閉症,対人関係スキル指導,ICF関連図,教師間連携


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 110-117

アフタースクールにおける個別学習支援
――算数が苦手な低学年児童の事例を通して

富井 和美
兵庫県立阪神特別支援学校

細谷 里香
兵庫教育大学連合学校教育学研究科

松村 京子
兵庫教育大学連合学校教育学研究科

小学校低学年での学習のつまずきは,子ども自身の自信を低下させ,その後の学校生活全体に影響を及ぼすことが予想される。
早い段階でつまずきの原因を見つけ,適切な支援をすることが必要である。
そこで本研究では,毎日開設されているアフタースクール(学童保育)において個別学習支援が,学習につまずきのある児童の算数理解と課題解決への主体性にどのように影響するのかを検討した。
その結果,アフタースクールは児童のつまずき内容の把握と個に応じたスモールステップの学習支援の場として重要であることが示唆された。


【キー・ワード】アフタースクール,個別支援,算数,低学年児童


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 118-128

広汎性発達障害のある成人への福祉サービスとしての「本人会」
――当事者のニーズと支援に必要な条件の検討

佐々木 かすみ
千葉県発達障害者支援センター

田熊 立
千葉県発達障害者支援センター

千葉県発達障害者支援センターは,発達障害のある当事者が集い,コミュニケーションや情報収集をする場としての本人会を立ち上げた。
さらに,支援者間の連携を持つために,支援を行う機関及び担当者を通じて参加することを参加の条件とした。
本研究では,本人会の活動を通して本人会が果たした役割を検討し,本人会が当事者支援として位置づけるために必要な条件を検討した。
その結果,本人会は参加した当事者の楽しみだけではなく,必要に応じて地域の支援機関と連携した支援の場として機能したことが明らかになった。
本研究の本人会は,地域における包括的な支援システムを構築し,新たな当事者支援の先駆的実践モデルの1つとなったと考えられる。


【キー・ワード】発達障害者,本人会,当事者,地域,包括的支援システム,居場所


臨床発達心理実践研究2010 第5巻 129-136

地域に合わせた発達支援システムの構築の到達点と課題
――宇治市の幼児期後期の発達支援のシステムのあり方を中心に

柳生 祥子
宇治市保健推進課

本報告では,宇治市における発達支援システムの最近の動向を,主に幼児期後期の支援を中心に整理し,これらの事業の果たしている役割と今後の課題について検討を行った。
乳幼児期に発達支援を必要とするケースは全体的に増加傾向にあるが,特に幼児期後期に保育所(園)・幼稚園などの集団生活において対人・行動面で気になる子どもの支援については,これまでの個別の発達相談に加えて,保育所(園)・幼稚園との連携を充実させていくことが検討課題となっている。
現在取り組み始めている幼児期後期の事業のひとつである「年中児発達サポート事業」は,保育所(園)・幼稚園との連携のあり方を模索する事業としての役割をもっている。
今後,さらに園連携の中身を充実させていくことが必要であると考えている。


【キー・ワード】地域に合わせた発達支援,幼児期後期,保育所(園)・幼稚園との連携