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臨床発達心理実践研究2009 第4巻

臨床発達心理実践研究2009 第4巻 4-13

成人期に高機能自閉症・アスペルガー症候群の診断に至った事例から

伊藤 淳一 河内 哲也
北海道社会福祉事業団太陽の園診療所・発達援助センター

小・中学校,高校において一般教育をうけながら,成人期に社会生活を営むうえで困難性を呈し,高機能自閉症やアスペルガー症候群の診断に至った事例について提示した。
二次的な精神症状を呈していない事例(Wingの社会的相互作用の質による分類:受動型に属する)に対しては,発達障害であるかどうかの判断とともに,社会的支援の活用を積極的に促すことが重要である。
そのためには,臨床発達心理士による発達的視点からみた的確な評価,さらには本人への特性の説明や診断告知を要する。
一方で,二次障害を呈する事例(同分類:多くは積極奇異型に属する)は,やはり精神科専門医による医療的対応が主となる。


【キー・ワード】 成人,高機能自閉症,アスペルガー症候群,受動型,積極奇異型


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 14-20

思春期・青年期の発達障害をめぐる教育の現状と課題

柘植 雅義
兵庫教育大学大学院

発達障害のある人への適切な教育への期待,これまでの特殊教育から新たな特別支援教育への歴史的転換,発達障害者支援法の成立などにより,発達障害のある人への教育が本格的に始動し始めた。
しかし,いわゆる思春期・青年期を過ごすことになる中等教育段階・高等教育段階における指導・支援については,初等教育段階の時期と比べると,学校における実践,行政の取り組み,実践的・基礎的研究のいずれにおいても十分な状態ではない。
そこで,本稿では,特に中学校,高等学校,高等専門学校,大学における発達障害のある人の教育的対応の現状と課題を,学校種毎の事項と,学校種横断的な事項から検討し,それらを踏まて10の事項に整理した。
なお,その際の各課題の遂行上の責務を,学校,行政,研究,保護者,一般国民の立場から明記した。


【キー・ワード】 発達障害,特別支援教育,思春期,中等教育段階,高等教育段階


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 21-27

発達障害をめぐる高等学校巡回相談の現状と課題
――TEACCH モデルから考える巡回相談のあり方

黒田 美保
国立精神・神経センター精神保健研究所

2007年に文部科学省の「高等学校における発達障害支援モデル事業」が開始され,高等学校においても特別支援教育の取り組みが進行している。
それに伴い,学校への巡回相談も増えてきている。
高等学校における巡回相談の特殊性は,教育課程修了後の地域社会での生き方を念頭においた,移行のためのコンサルテーションが非常に重要になる点である。
東京都の高等学校での巡回相談の現状を概観し,その課題を考える。
同時に,学校コンサルテーションや個別移行支援計画の先進国である米国におけるTEACCH の支援モデルを参考に,生涯発達的視点にたった高等学校というライフステージにおける巡回相談の在り方を考察する。


【キー・ワード】 巡回相談,個別移行支援計画,ライフステージ,TEACCH


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 28-33

思春期・青年期の発達障害をめぐる就労支援の現状と課題

向後 礼子
城西国際大学

本論文では,思春期・青年期の発達障害をめぐる就労支援の現状と課題について,次の3点を論じた。
まず,第1に就労支援の対象となる発達障害者の範囲について,法律における対象者の範囲,医学的定義,教育における判断の異同について整理した。
併せて,現時点では未診断である発達障害を主訴とする者の課題について論じた。
第2に統計資料に基づき,発達障害者の職業紹介状況並びに就労支援サービスの利用実態について論じた。
第3に発達障害・軽度知的障害者を対象とした技能教育施設(高等学校と連携)に在籍する生徒を対象に在学中に行った特性評価の結果と卒業後の進路との関連について論じ,在学中の課題を整理した。


【キー・ワード】 思春期・青年期,発達障害,就労支援


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 34-43

思春期・青年期の発達障害をめぐる社会生活支援の現状と課題

高橋 和子
金沢大学子どものこころの発達研究センター

思春期・青年期の発達障害をめぐる社会生活支援の現状と課題について,支援に関連する4場面ごとに検討を加えた。
①家庭では,幼少期から適切な子育てができないために思春期・青年期に不適応を招くケースも少なからずあること,よって,親が具体的に子育てを学べる機会が必要である。
②学校では,系統立てた就労支援を行うこと,「いじめ」の根絶が課題としてあげられる。
③発達障害者支援センターには,高次の支援機関として地域の支援システムを構築してもらいたい。
④各発達障害親子の会では,思春期・青年期になっても当事者,家族が活動を続けられることが肝要である。
思春期・青年期の発達障害をめぐる社会生活支援を考えたとき,問題は当事者のこの時期だけの問題ではなく一生涯のなかで捉えることが重要である。


【キー・ワード】 思春期・青年期,発達障害,社会生活支援


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 44-50

発達障害のある青少年の非行の現状と課題

藤野 京子
早稲田大学

まず,注意欠陥/多動性障害や広汎性発達障害と非行や素行障害との関係性についての内外の疫学調査を概観した。
その後,疫学調査で示された関係性とは,必ずしもこれらの発達障害による生物学的要因に起因するとは限らず,発達障害の二次障害として派生したものも含んでおり,実際,発達障害のある非行少年の多くは,一般の非行少年同様,社会不適応状況を抱えており,その状況が非行に至らしめている実情に言及した。
また,少年院では発達障害の観点を踏まえた働きかけの充実が図られつつある段階にあるものの,発達障害のある非行少年に対する社会での受け入れは厳しく,発達障害を早期に発見し,非行に至らしめない体制作りが肝要であることを明らかにした。


【キー・ワード】 発達障害,非行,素行障害,二次障害,虐待


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 51-58

大学におけるチームアプローチ的支援
――自傷・他害性のある困難事例への対応

遠藤 美行
同志社大学

本稿は,従来の学生支援の枠組みを超えた「チームアプローチ」的手法を取り入れた支援によって緊急事態が回避された二つの事例を扱ったものである。 考察の結果,①自傷,他害の危険性が高い困難事例においては従来の学生支援システムでは十分な対応ができず,限界があること,②それゆえ,こうしたケースでは,「チームアプローチ」的支援による危機介入が必要かつ有効であることが確認された。 ③そのために「チームアプローチ」的支援の支柱となるコーディネーターは,それぞれの専門家による複数のアセスメントを,より包括的な視点から統合する必要があり,また④危機回避のために拡大守秘義務の運用も考慮に入れるべきであることが明らかになった。


【キー・ワード】 チームアプローチ,困難事例,危機介入,コーディネーター,拡大守秘義務


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 59-66

発達障害が推察される児童に対するナラティブ=「自己経験や物語を分かりやすく伝える力」の発達と支援
――会話の「足場かけ」による体験の表現と絵話の指導を通して

松本 惠子
千葉県八千代市立八千代台小学校

長崎 勤
筑波大学人間総合科学研究科

発達障害のあることが推察され,自発的に体験を語ることが少ない児童に対して,幼児のナラティブの発達を参考に,児童と指導者による会話の足場かけで,パーソナル・ナラティブから始めフイクショナルストーリーを組み合わせた指導を行い,ナラティブの獲得経過とその支援方法について検討した。
1年半の指導の結果,出来事の繰り返しだった体験の表現は,絵話の指導後には指導者の足場かけにより,出来事を時系列的に関連づける表現が可能になり,更に出来事を因果的に関連づける表現も徐々に可能になってきた。
絵話の指導では,因果関係や誤信念の表現が可能になった。


【キー・ワード】 発達障害,ナラティブ,会話による足場かけ


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 67-77

アスペルガー障害児に対するソーシャル/コミュニケーション支援
――生態学的視点に基づくクラスルームベースのアプローチ

森脇 愛子
東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科

藤野 博
東京学芸大学教育学部

自閉症スペクトラム障害児に対するSSTの必要性が指摘されているが,ボトムアップ型のスキルトレーニングのみでは現実場面で生じる問題の解決には至らないことが多い。
そこで本事例ではアスペルガー障害児の在籍するクラスルームをベースとした生態学的アプローチによるソーシャル/コミュニケーション面の支援の効果を検討した。
本児と他児とのコミュニケーション上のトラブルについて,実態把握,それらの問題解決のための個別のスキル指導,そして実際にクラスでの活用ができるよう支援を行った。
約半年の支援の結果,本児の学級集団への適応や活動への参加が促進され,生態学的視点に基づくクラスルームベースのアプローチの有効性が示唆された。


【キー・ワード】 アスペルガー障害,ソーシャル/コミュニケーション支援,クラスルームベース,生態学的アプローチ


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 78-87

保育支援の実態とニーズ
――保育所・幼稚園と関係機関との連携のあり方

日本臨床発達心理士会実践研究プロジェクト 保育支援
       
倉盛 美穂子
鈴峯女子短期大学
三宅 幹子
福山大学
荒木 久美子
ひまわり整肢園
井上 孝之
岩手県立大学
       
杉山 弘子
尚絅学院大学短期大学部
金田 利子
白梅学園大学
秦野 悦子
白百合女子大学
廣利 吉治
東海学院大学
       
西川 由紀子
華頂短期大学
坂田 和子
福岡女学院大学
山崎 晃
明治学院大学
 

近年,保育所・幼稚園と関係機関(小学校や行政等)との連携は年々増加している。
本研究では,保育現場で必要とされている連携とは何か,そして,保育所・幼稚園と他機関との連携において臨床発達心理士に求められる具体的な役割や活動とは何かを考えるため,保育所・幼稚園への質問紙調査により,連携の現状と課題について考察した。調査の結果,情報共有のあり方,互いの専門性を理解し役割を明確にすること,得られた情報と保育実践との整合性を理論的に整理することに難しさがあるために,連携が必ずしも充分な機能を果たすとは限らないことがわかった。
保育の質につながるような連携体制を確立するには,情報提供を超えた協働関係を作り出すことが必要であると思われる。


【キー・ワード】 連携,保育所,幼稚園,臨床発達心理士の役割,協働関係


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 88-96

保育園における自閉症女児への3年間の言語指導
――個別指導内容を生活場面に結び付けていくために

野村 直子
調布市あゆみ学園

専門家による言語・コミュニケーション指導は,指導の場が子どもの生活の場と切り離されているため,指導内容が日常生活に反映しにくく,その対応としては,子どもの生活場面での指導および介入が必要であると指摘されている。
言語聴覚士である筆者は,自閉症女児A に2週間に1度,対象児が在籍する保育園で個別指導と保育者への助言指導を実施した。 本研究では,保育園における3年間の言語指導を振り返り,個別指導内容を生活場面の言語・コミュニケーション力に結び付けていくという視点から検討を行った。
指導内容を保育場面に結び付けるためには,①保育園での対象児の生活を知ること,②保育の中で対象児が獲得すべき行動様式について保育者と共通認識を持つこと,③その行動様式の獲得に必要なことがらを個別指導課題にとりあげ,その個別指導内容を保育で活用できるよう保育者に助言を行うことが有効であると示された。


【キー・ワード】 自閉症,保育園,言語・コミュニケーション指導,個別指導,生活場面


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 97-104

「気になる」子どもの保育コンサルテーション
――遊びを通じた集団参加支援

飯島 典子 本郷 一夫
東北大学大学院教育学研究科

本稿は,障害の診断名のない「気になる」子ども(3歳男児)に対する保育コンサルテーションの効果を本児の協同遊びへの参加から検証し,支援のあり方を検討することを目的とした。
保育コンサルテーションは年3回(6月,10月,翌年2月)行われた。
ここでは,本児が集団の一員として活動に参加できるようになることを目指し,お集りとルール遊びを通じた集団作りと,コーナー遊びを通じた子ども同士の関係の形成を中心に支援が進められた。
その結果,保育者の本児に対する「気になる」程度は減少し,本児のルール遊び場面における協同遊びへの参加割合が増加した。 ここから,遊びを通じた集団作りと「気になる」子どもへの支援の妥当性が検討された。


【キー・ワード】 「気になる」子ども,保育コンサルテーション,遊び,集団作り,仲間関係


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 105-111

アスペルガー症候群生徒の学習指導に関する研究
――思春期・受験期を迎えたA少年の事例を通して

藤原 有子
大阪大学大学院人間科学研究科

村瀬 忍
岐阜大学教育学部,岐阜大学大学院医学系研究科

幼児期にアスペルガー症候群と診断された普通学級に在籍する生徒への支援のあり方を取り上げたものである。
義務教育終了後の進路を見据え,発達に即した行動や受験に必要とされる学力を育成し,義務教育終了後までサポートした症例を報告する。
その結果,問題行動の減少と学力向上に関係があることが示された。


【キー・ワード】 アスペルガー症候群,問題行動の抑制,学習指導,英検取得,高校受験


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 112-118

支援ツールを使用した巡回相談事例
――給食場面で行動問題のある事例

野澤 純子
筑波大学

本研究では,給食場面での行動問題に関する巡回相談事例において,ツールを使用した支援を行った。
対象は統合保育を利用する5歳の自閉症児および保育士3名であった。
支援は相談員と保育士との協働を狙いとして,実態把握,計画立案,実践,事後評価の順に実施された。
ツールにはアンケート用紙,観察・記録用紙,情報用紙,目標シートなどが含まれた。
結果は,保育士が対象児を主体的に観察・記録し,予防的対応が増加した。
また対象児の適切行動が増え,支援後も適切行動を維持していた。
事後には対象保育士から支援の肯定的評価を得た。
本手続きが協働的な支援の実現や保育士の主体的行動を促進し,さらに限定された支援回数の補完に貢献したことが示唆された。


【キー・ワード】 巡回相談,協働,支援ツール,特別なニーズ,行動問題


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 119-128

「気になる子ども」と保育者に対する場への入り込みを通した保育支援
――幼児教育支援センター事業の取り組みより

木野 仁美
岬町幼児教育支援センター事業

本研究では,幼児教育支援センター事業での事例のうち、保育者が「気になる子ども」と感じる明確な診断名のついていない子どもへの支援と,保育者への支援について検討した。
保育カウンセラーは、保育現場で対象児に直接関わり支援すると共に,保育者には子どもに対する具体的にかかわり方を提案した。
その結果,対象児は自己コントロールできるようになり,保育者はこれまでの保育のあり方について内省し,環境を構造化する必要性への気付くようになってきた。
今後の課題は、入り込みの支援のより一層の充実と,気付きを促す保育者の学びの支援のあり方,保護者を直接支援に結びつけるための保育者支援である。


【キー・ワード】 「気になる子ども」,保育者への支援,保育者の気付き,具体的なかかわり,音楽療法


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 129-137

自閉症スペクトラム障害児に対するソーシャルナラティブを用いた会話指導

米山 由希子
東京都立小金井特別支援学校

藤野 博
東京学芸大学教育学部

自閉症スペクトラム障害の一事例に対し,ソーシャルナラティブを用いて会話スキルの向上を目指して行った指導の効果を検討した。
アセスメントにおいては会話分析を行い,他者との会話を維持・展開するために必要なスキルを同定し,そのスキルを獲得するため情報を盛り込んだストーリーを作成した。
そのストーリーをまず個別指導場面で対象児に読ませ,それに続けて他児との自由会話場面を設定し,ストーリーに書かれた行動を実行させた。
指導の結果,相手に対して適切な方法で発言を促す・質問する,聞き手として適切な態度で相手の発言を聞く,という会話スキルについては指導の効果が見られた。
また,他児との会話において全体的に話題が維持・展開されるようになり,会話を楽しむ場面が多くなった。
この結果より,自閉症スペクトラム障害児に対するソーシャルナラティブを用いた会話指導の効果について検討した。


【キー・ワード】 自閉症スペクトラム障害,ソーシャルナラティブ,会話指導


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 138-147

重度重複自閉症児への自発的活動を目指した指導

新井 豊吉
東京都立石神井特別支援学校

激しい過敏と自傷をもち,学校・家庭生活に困難を抱えている生徒に対して,自傷の軽減,自発的活動の増加を目指した事例研究である。
アセスメント,教室環境などの構造化,自立課題中心の学習を行うとともに,PECSやVOCAを用い,カードを手渡して要求を伝えること,トイレにオムツを捨てに行くことなど,自発的な活動が増加した。
今後,対象者に対して集会や行事への参加など,集団活動の参加の仕方をどのように考え,教師・保護者と共通理解を図っていくかが課題となっている。


【キー・ワード】 自閉症,保護者との協同,構造化,自立課題,コミュニケーション


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 148-156

自閉症児の継続的歯科通院における保護者のニーズに関する研究

庭野 賀津子
東北福祉大学総合福祉学部

五十嵐 博恵
Uクリニック五十嵐歯科

本研究では歯科通院を継続している自閉症児・者57名の保護者を対象とした質問紙調査を実施し,(1)保護者が自閉症の子を歯科受診させる動機,(2)自閉症児が歯科診療場面で困難を示す状況,(3)家庭での口腔衛生に関する理解と協力,(4)保護者が継続的に自閉症児を歯科通院させる場合の動機となる要素の4点を明らかにすることを目的とした。
結果から,通院開始の動機は「歯科治療に慣れておくため」がもっとも多いが,その後は齲蝕予防目的で継続通院をすることが多く,保護者が口腔衛生の必要性を認識していることが明らかとなった。
また,継続通院の要因としてスタッフの親切さや口腔衛生の指導があげられており,歯科医院での障害児診療におけるニーズが示唆される結果となった。
今後の新しい歯科医院のあり方として,小児科医や心理職との連携のもと,障害児の育児支援の場としての機能の可能性について考察をした。


【キー・ワード】 自閉症,歯科治療,継続通院,口腔衛生,育児支援


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 157-163

読字困難をもつ小学生の「イラスト漢字」トレーシング練習の効果

佐竹 真次
山形県立保健医療大学

漢字の読みに困難を訴えた小学生に対し,漢字に関連するイラストを重ねた「イラスト漢字」を考案し,漢字部分とイラスト部分を数回トレースさせてその漢字の読みを教え,復唱させるとともにその読みをひらがなで書かせる練習を繰り返した。
結果は,漢字のみのトレーシング練習での8セッションに渡る読みの平均正答率が10.3%,「イラスト漢字」のトレーシング練習での読みの平均正答率が75.9%であった。
このことは,「イラスト漢字」でトレーシング練習を行ったことのある漢字の形態を視覚的に知覚したときに,関連するイラスト部分をイメージし,対応する表象的意味が想起され,その意味に対応する音韻が喚起されやすくなる可能性を示唆した。


【キー・ワード】 読字障害,イラスト漢字,トレーシング練習,表象的意味,意味処理過程


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 164-170

知的障害児に対する文字を用いたコミュニケーション行動の形成とその般化促進
――行動問題の減少を中心に

関戸 秀子
神奈川県立麻生養護学校

関戸 英紀
横浜国立大学

本研究では,施設に入所している知的障害児(養護学校中学部3年)の行動問題を減少させるために,対象児が受信できるとともに対象児からも発信できるコミュニケーション方法として,文字を用いたコミュニケーション行動を形成することを目指した指導を行った。
さらに,学習場面で形成されたコミュニケーション行動が日常生活場面や家庭にも般化するように,施設職員・クラス担任や保護者に対しても支援を行った。
その結果,それぞれの場面において文字を用いたコミュニケーション行動が成立するにしたがって,行動問題の減少が観察された。
これらのことから,コミュニケーション行動と行動問題との関連性,コミュニケーション行動の般化促進の要件に関して検討がなされた。


【キー・ワード】 知的障害児,コミュニケーション行動,般化,行動問題,文字


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 171-179

就労を希望する自閉症者の職場定着に向けたセルフ・マネジメントの形成
――雇用を前提とした実習支援を通して

松田 光一郎
社会福祉法人北摂杉の子会

本研究は,就労を希望する自閉症者の雇用前実習において,筆者がジョブコーチという立場で,対象者の障害特性に応じた介入を行った実践報告である。
具体的には,職場の環境調整と作業チェック表を用いた介入を行った結果,課題達成率がベースライン期よりも上昇した。
さらに,職場で求められる達成基準と作業評価の一致が図られた。
したがって,作業チェック表を用いることで他者からの指示や評価を受けるのではなく,自律して作業を遂行するセルフ・マネジメントの形成に有効であったという結果とともに,作業チェック表を使用した般化手続きを検討することが,今後の課題として提示された。


【キー・ワード】 自閉性障害,セルフ・マネジメント,ジョブコーチ,実習支援,ABC分析


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 180-192

通常の保育活動の中でできる攻撃的な男児への支援

小林 真
富山大学人間発達科学部

宮林 昌英
射水市教育委員会

吉田 真寿美
富山大学人間発達科学部附属幼稚園

本研究では,幼稚園における攻撃的な幼児に対する介入が行われた。
介入は通常の幼稚園教育の活動の中で行われた。
介入は次の2つの内容を含んでいた。
第1は,子どもが攻撃を実行してしまったときに,どうすれば良かったかを考えさせることであった。
第2は,彼が攻撃行動を抑制できたり,友だちに優しくしたときに大いにほめることであった。
介入の後で,彼の攻撃行動は減少した。
この結果は次のことを示唆している。
すなわち,個別のSST を実施しなくとも,教師は子どもの攻撃行動を減少させられるということである。


【キー・ワード】 保育,攻撃行動,ソーシャルスキル


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 193-201

北海道における巡回療育支援での心理士の役割

金澤 俊文
社会福祉法人麦の子会むぎのこ

広域で療育資源が偏在している北海道に‘早期療育システム’が始まり,20年が経過した。
この間,各地域に子どもの療育(発達支援)を担う‘子ども発達支援センター’が設置されてきた。
しかし,各子ども発達支援センターでの発達評価や療育実践,家族支援の取り組み等に格差が生じている。
本実践報告は,北海道における地域への巡回(専門)療育支援を紹介する。
併せて,療育資源が偏在している地域における心理士の役割について考察したものである。


【キー・ワード】 療育システム,専門支援,発達支援,発達評価


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 202-208

「小1プロブレム」を防ぐ指導体制の工夫
――支援教育の視点で見る集団ソーシャルスキルトレーニング

大里 朝彦
相模原市立富士見小学校

本校では6年前から,1年生が入学後の約1ヶ月間,仮のクラスを編成する,担任を決めず教師が各学級を回って指導する,保護者等のボランティアが入る,授業に遊びの要素を取り入れる等の工夫を行い,1年生の早い時期での学校適応を図っている。
「富士見SSTプラン」と呼ばれるこの取り組みにより,いわゆる「小1プロブレム」という状況には陥らず,小学校生活へのスムーズな適応が図られ,同様の方法を取り入れる小学校も出始めている。
この取り組みには,いわゆる「支援教育」の考え方や手法が随所に取り入れられており,それが,子どもたちの早い段階での学校適応という成果を生み出していると考えられる。
そこで,「支援教育」の視点からの見た「SST」の取り組みを紹介したい。


【キー・ワード】 小1プロブレム,ソーシャルスキルトレーニング,支援教育


臨床発達心理実践研究2009 第4巻 209-216

南丹保健所圏域5歳児モデル事業の実践とその効果

高野 美由紀
兵庫教育大学臨床・健康教育学系

南丹保健所圏域亀岡市での5 歳児モデル事業を紹介し,この事業における効果の検証を行った。
保護者からの健康観察票の回収率は98.0%であり,回収されたもののうち発達障害が疑われたのが5.2%であった。
保護者のニーズや保育者の困りに対応できていること,集団場面での困難が軽減し,必要に応じ教育相談につながったことが示唆されたが,保護者および保育者からの評価,相談支援の質に対する評価を今後明らかにする必要がある。
この実践を通じて,保育現場支援,特に保育現場での保護者支援への介入を充実させること,就学時移行支援への保健行政と教育行政の連携によるトップダウン的介入を行うことが早期支援体制の整備において今後特に重要と考えた。


【キー・ワード】 5歳児健診,発達障害,早期支援