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臨床発達心理実践研究2008 第3巻

臨床発達心理実践研究2008 第3巻 4-9

これからの育児支援のあり方
―新たな子育て施策策定を迎えて

大日向 雅美
恵泉女学園大学

1990年の1.57 ショックを契機とする日本の少子化対策・子育て支援は,2007 年末に「子どもと家族を応援する日本重点戦略」が策定されて,新たな転換期に入った。
今回の施策は,従来の総花的な施策を脱し,今日及び近未来の日本社会の変革を見据えて必要な重点施策を打ち出したものであり,具体的には「働き方の改革」と「家庭における子育てを包括的に支援する枠組み(社会的基盤)を構築する」ことを「車の両輪」として推進することを施策の中心に据えている。
一言で言えば,子育てや家庭生活を犠牲にすることなく働き続けられる就労環境を整備する必要性を強調し,同時に多様な親の働き方を可能とする柔軟なサポート体制を整備し,安心して子どもを預けることのできる保育や地域の育児支援の充実を目指そうとするものである。
臨床発達心理士が子育て支援において重視する点は,言うまでもなく子どもの発達保障であり,同時に親が親として育つプロセスとして親子関係のあり方を検討することであり,今般の重点戦略が目指す方向と一致している。政策の重心が,従来の箱物的な支援や現金給付的な経済支援から,親の働き方や子育て支援を支える保育者や支援に携る人材養成の重要性に移されつつある中で,臨床発達心理士が地域の子育て支援活動に果たすべき役割は従来にも増して期待される時を迎えたと言えよう。
本稿では,注目すべき新たな子育て支援施策の内容について概説すると共に,臨床発達心理士に求められる子育て支援の視点や果たすべき役割について述べている。


【キー・ワード】子どもと家族を応援する日本重点戦略,働き方の改革, 家庭における子育てを包括的に支援する枠組み(社会的基盤)の構築, 地域の子育て支援活動,支援マインド


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 10-17

育児・保育支援の取組
―群馬県前橋市幼児教育センターの取組

松永 あけみ
群馬大学

塩崎 政江
群馬県幼児教育センター

前橋市幼児教育センターでは,文部科学省の幼児教育支援センター事業及び発達障害早期支援モデル事業の委託を受けながら,保育カウンセラー等のサポートチームを編成して,同市内の育児・保育支援に取り組んできた。
同センターでは,乳幼児期の子どもにかかわる全ての行政所轄間や相談担当者間をつなぐ組織体制作ってきた。
また,公民館との連携による育児支援や保育所・幼稚園への出前訪問研修・相談など,デマンドサイドに立ったより身近に利用できるような体制を構築し,一定の成果をあげている。
そしてその中で,家庭と保育所・幼稚園をつなぐ等の子どもが育つ場同士をつなぐ支援体制の構築及び幼児期と児童期をつなぐなど時間軸をつなぐ支援体制の構築が今後の課題として浮かんできた。


【キー・ワード】育児・保育支援の組織体制,幼児教育支援センター事業,保育カウンセラー


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 18-26

日常生活場面における育児・保育支援

土谷 みち子
関東学院大学

幼い子どもをもつ保護者は,これまでは自宅や公園などで子どもを遊ばせながら他の家族と交流することが主であったが,近年「遊びの広場」と呼ばれる,家庭以外に日常的に過ごす場,つまり居場所を確保できるようになった。
本稿では,保育施設(幼稚園)に設置された親子の「遊びの広場」における取り組みと,広場で関わったハイリスク事例とその対応を紹介した。
今後の育児・保育支援における方向性として,どの家庭でも抱える可能性のあるハイリスクな側面を予防するために,日常生活場面における遊びと関係性に配慮した,丁寧な親と子へのアプローチを提案した。


【キー・ワード】日常生活,ハイリスク家庭,予防的関わり,親子関係,保育環境


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 27-34

発達相談と育児・保育支援
―A 市こども発達支援センターでの巡回療育相談事業

三浦 文
こどもの発達相談室 もこもこ

平成13 年度から,A 市ではこども発達支援センターによる地域支援として幼稚園・保育所への巡回療育相談事業が行われ,平成18 年度までに,巡回療育相談実施園の増加,巡回数の増加,センターを利用していない子の相談の増加等が見られた。
さらに,保育機関のニーズに合わせた巡回療育相談を実施することにより,療育機関の通所に至らないケースに対する保育支援を通した発達支援が可能になってきた。
本報告では,健診から発達相談を継続し,巡回療育相談を実施することによって療育機関の利用に至った事例を紹介し,今後の課題について検討した。


【キー・ワード】発達相談,育児・保育支援,幼稚園・保育所への巡回療育相談,発達支援


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 35-40

園内研修による保育支援
―園内研修の特徴と支援者に求められる専門性に注目して

秋田 喜代美
東京大学大学院教育学研究科

保育支援としての園内研修の特徴として,保育者の専門的な省察への支援,園の同僚性の形成と問題となった実践についての表象を協働で形成していくための支援,そして園が持続可能な専門家の学びの場となるための園文化形成への支援という3 点を挙げ,そのために支援をする側にもとめられる専門性を論じた。


【キー・ワード】保育者の専門性,同僚性,実践表象の形成,園文化,保育過程の質


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 41-49

自閉症児の他者理解を促す指導に関する研究
―特別支援学校小学部自閉症児A 児の事例を通して

三村 和子
茨城大学教育学部附属特別支援学校

松村 多美恵
茨城大学教育学部

対人的相互関係に重篤な障害をもち,別府(2001)の示す「行為者としての他者理解のレベル」に達していない自閉症児A 児を対象に,指導者の指さし行動を理解させることと,指導者の存在を意識させることに焦点をあてた個別指導を行った。
その結果,個別指導場面においてボールのやり取りや後方向への指さし理解が可能になった。
さらに,日常生活場面においても「行為者としての他者理解」が可能になったと思われる行動がみられた。


【キー・ワード】自閉症児,他者理解,個別指導,指さし理解


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 51-58

自閉性障害のある子どもに対する
コミュニケーションスキル習得の支援
―生活の中でのあいさつスキルの習得と集団適応を目指して

本田 正義
山形県南陽市 ことばの相談・指導訓練教室

他者とのコミュニケーションに困難を抱える自閉性障害のある子どもに対して,「あいさつスキル」の習得を中心とした支援をすることによって他者との関わりを改善する契機とし,集団適応を促進させることができるのかを検討した。
また,あいさつスキル習得の基盤となる環境調整も同時に行った。
ほぼ半年にわたる支援の結果,6 つのあいさつことば(「おはようございます」「おやすみなさい」「さようなら」「ありがとう」「どうぞ」「ごめんなさい」)が日常生活の文脈の中に位置づけられ,自発できるようになった。
あいさつスキルの習得と環境調整の両面の支援が,家族や園における対人関係に変化をもたらし,社会的フィードバックを増大させ,集団適応を促進させることが示された。


【キー・ワード】自閉性障害,あいさつスキル,対人関係,環境調整,集団適応


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 60-68

ADHD児に対する社会的ゲームによる社会性の発達支援
―7並べスクリプトによる「ルール変更の申し出」「理由の言語化」「自己統制力」「相手の意向をきく」行動の指導を通して

中田 ゆかり
高知市立初月小学校

普通学級に在籍する不注意型ADHD のある小学3年生男児を対象にして,社会性の発達支援を目的に,7並べスクリプトによって「ルール変更の申し出」「理由の言語化」「自己統制力」「相手の意向をきく」などの指導を行った。
指導者と場を共有し,本児自身が取るべき行動について考える中で自己統制力が促進された。
また,場面や相手が変化しても指導した内容は生かされた。質問紙による評価では,自己効力感が向上した。
保護者や学級担任からの評価も向上がみられ,母親からは「上手に遊んでいる」といった報告がなされた。


【キー・ワード】ADHD,社会性の発達,スクリプト,自己統制力,自己効力感


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 70-74

視覚障害と重度知的障害を併せもつ重複障害児における要求および拒否発語の指導

松田 幸恵
岩手大学大学院

宮﨑 眞
岩手大学

本実践研究は,視覚障害と重度知的障害を併せもつ重複障害児にコミュニュケーションを指導する中で対人行動全般の発達を促すことを目的とした。
まず歌遊びの中で要求発語を促し,次に手遊びの中で要求および拒否発語を促した。
この指導の結果,生活の中で対人行動全般が促された。


【キー・ワード】重度重複障害,人との関わり,コミュニュケーション行動,要求発語,拒否発語


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 76-80

特別支援学校の日常生活場面におけるPECSの指導
―休み時間を用いて指導をすることは可能か

由谷 るみ子
神奈川県立相模原養護学校

絵カード交換式コミュニケーションシステム(Picture Exchange Communication System;PECS)は,自閉性障害児に対して,要求物を絵カードと交換することからはじめるコミュニケーション行動指導システムである。
PECS では,自閉性障害児のコミュニケーション指導で生じる問題を考慮されているが,特別支援学校で,マニュアルに示されている2人の指導者による集中指導を行うことは難しい。
そこで通常の指導体制の中で,対象児が物品を要求する機会を利用して,絵カードと交換する要求物としておもちゃを用いて指導したところ,フェイズⅢまで獲得することができた。
この結果から特別支援学校での実践でPECS を取り入れる際の条件について検討した。


【キー・ワード】PECS,自閉性障害,特別支援学校


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 82-88

広汎性発達障害幼児における象徴遊びの発達支援
―環境設定の効果

田坂 裕子 伊藤 良子
東京学芸大学教育実践研究支援センター

本研究では,広汎性発達障害幼児に象徴遊びを促進するため行った支援を,象徴遊びの発達の3つの視点(事物使用・行為の対象・行為の連鎖)から検討し,実施した4 回の指導における支援の有効性を明らかにすることを目的とした。 この3視点から対象児の達成水準を把握することにより,児の状態に応じた遊具選定や他者の相互交渉の拡大を意図した場面を導入する等の象徴遊びの発達支援を行った。 その結果,見たて遊びや人形を介した他者へ向けた行為が増加すると共に,遊び行為の連鎖も増大した。 さらに象徴遊びが豊富になることで,対象児の言語表現に発展が見られ,広汎性発達障害児の言語支援に象徴遊びを導入することの有効性が示された。


【キー・ワード】広汎性発達障害幼児,象徴遊び,発達支援,環境設定,言語発達


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 90-97

知的障害を持つ児童の書字学習に対する発達心理学的支援

佐野 幹剛
東筑紫学園専門学校 九州リハビリテーション大学校

知的障害を持つA児(7歳)の書字障害を視知覚能力の問題と捉え,個別支援と家族及び学校に対する学習支援を実施した。
個別支援では,攻撃的な態度であったA 児との信頼関係が確立し,視知覚学習課題が定着し,DTVPの知覚年齢が改善され,正しく書けるかな文字の割合も上がった。
しかし,書字の流暢性や文章レベルの書字など課題が残った。
家族支援では,家族がA 児との接し方を理解し,家庭学習が定着した。
学校支援では,間接的な連携を通して学級担任の対応の変化や教育環境の整備が実現した。
今後の課題として,個別支援では視知覚能力だけでなく音韻意識の評価や指導,家族支援では社会性を育むSST などの指導,学校との連携では筆者が学校現場に出向いて支援できるシステムや組織作りが必要である。


【キー・ワード】知的障害,書字スキル,視知覚能力,家族支援,学校支援


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 99-106

社会的ゲーム型共同行為ルーティンを用いたコミュニケーション発達支援の試み
―知的障害特別支援学級での伝承遊びによる小集団指導を通して

大槻 美智子
千葉県香取市立佐原小学校

吉井 勘人
筑波大学附属大塚特別支援学校

本研究は,知的障害があり,他児とかかわることが苦手な児童に対する日常生活の文脈の共有による,生活の中で活かせるやりとりを目指した指導の妥当性について検討することを目的とした。
具体的には,小学校知的障害特別支援学級在籍児童へのコミュニケーション発達支援として,伝承遊びを用いて「社会的ゲーム型共同行為ルーティン」を設定し,児童のルーティン理解と表出に対して段階的な支援を行った。
その結果役割理解が進み,それに伴って言語表出が可能になった。
ゲームの理解が進む中でアドリブでのやり取りを楽しむ姿も見られるようになった。
また,ルール理解も進むことでより多くの友だちと活動することが可能となった。
これらのことから,小学校低学年の児童への,初期のコミュニケーション発達支援の可能性について考察した。


【キー・ワード】コミュニケーション発達支援,スクリプト,自立活動


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 108-115

コーディネーショントレーニングが視知覚能力に与える効果
―小学校での実践を通して

伊藤 恵子 大橋 恵 山極 和佳 藤後 悦子 竹内 貞一 益井 洋子
東京未来大学こども心理学部

身体をコントロールする能力の向上を目的としたコーディネーショントレーニングを一定期間実践することが,視知覚能力にどのような効果を与えるかを検討した。
対象は,実験群,対照群ともに,都内公立小学校1,2年の各1通常学級であった。
効果の測定には,フロスティッグ視知覚発達検査を用いた。
その結果,複雑な素地から図形を知覚する能力および空間における位置を把握する能力に関して,1年生への効果が確認された。
目と手の協応動作に関しては,コーディネーショントレーニングの効果の傾向が認められ,それは1年生において大きかった。
形の恒常性に関する能力および空間関係把握能力に関しては,効果は確認されなかった。
このように,コーディネーショントレーニングが視知覚能力に一定の効果を与えることが見出された。


【キー・ワード】コーディネーショントレーニング,視知覚能力,小学生,フロスティッグ視知覚発達検査


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 117-123

特別支援学校における学校コンサルテーションの在り方
―高機能広汎性発達障害児への通常学級適応を高めるための発達支援事例からの検討

内田 幸枝
茨城県立友部養護学校

本研究では,特別支援学校が地域の特別支援教育のセンターとして機能するための,学校コンサルテーションの在り方について,前任校であるA 特別支援学校での実践において検討した。
筆者は,特別支援学校の特別支援教育コーディネーターとして地域支援を担当している。近年,小・中学校からの通常の学級に在籍する発達障害児の指導方法への支援要請が増加しており,特別支援学校の特別支援教育コーディネーターが,学校コンサルテーション機能をいかに発揮していくかが課題であった。
そこで,小学校に在籍する高機能広汎性発達障害児への発達支援を通して,学校コンサルテーションの在り方を検証した。
課題解決に向けて効果的に学校コンサルテーションを行うための手順と方法について,大石(2002)が提案した「コンサルテーションの5 段階モデルに基づくコンサルタントの役割」に沿って事例への発達支援を実践することで,地域支援としての学校コンサルテーションの在り方と有効性が示された。


【キー・ワード】学校コンサルテーション,地域の特別支援教育のセンター的機能,特別支援教育コーディネーター,コンサルタント


臨床発達心理実践研究2008 第3巻 125-131

自閉症を持つイリスくんのコンサルテーション
―幼稚園生活の発見と参加,その言語化の支援のために

佐澤 智恵子
尚絅大学短期大学部(非常勤)

本論のテーマは,自閉症をもつ幼稚園児イリスくん(仮名)の「園生活の発見と参加,その言語化」に取り組んだ担任と保護者へのコンサルテーションの検証である。
論点は次の2 つである。
第一は,本児と本児のクラスメートに,障害を持っている子もいない子もともに暮らせる生活体験;Living with disorder を提供しその言語化を試みるという支援のあり方と本児の発達的変化について,支援の妥当性,問題点,今後の課題を明らかにすることである。
第二は,わが子の障害告知を受けて間もない保護者(や専門知識の乏しい幼稚園教師)であっても,彼の特性を理解し,支援ニーズを把握し,計画・実行・評価のサイクルを共有してゆくサポートシステムについての考察である。


【キー・ワード】二足歩行のアセスメント,三段ケーキの支援計画,自閉症児の模倣, 自閉症児の言語,育ちあいのデザイン